完璧な彼は、溺愛ダーリン
「あーあ……、駅とか、あっという間だわ」
立ち止まると、葛木さんがぼそっと呟く。
その少し先に駅が見えてきて、たくさんの人が吸い込まれていく。
「ほとんど喋れなかった……。何してるんだか、俺」
はあっと盛大な溜め息をつく葛木さんは、私の方に向き直った。
「駅、どこ?」
「荻窪駅です」
「それでお別れか。わかった。行こっか」
改札を抜けると、お互い黙ったままホームへと向かう。
私の乗る電車はすぐに来て、乗り込んだ。
ぎゅうぎゅうまではいかないけれど、それなりに人がいて自由に身動きが取れる感じではない。
「扉側寄って」
「え?はい」
他の人から守る様に前に立ってくれる葛木さん。
……凄く近い。
「……葛木さんはどこに住んでるんですか?」
「え」
目をぱちぱちとさせ、驚いた様子を見せる葛木さんに私は首を傾げた。