完璧な彼は、溺愛ダーリン


ナイト会員の切り替え時間ぴったりに葛木さんは滅多に来ない。
切り替えは混雑しているのをわかっているからだと思う。


「はあ~緊張する」

「今日言うの?」

「うん、そのつもり」

「頑張ってね」


スルスルとつっかえることなく、私の口からそんなセリフが出た。
栞は黙ったまま頷いている。


「こんばんは、どうぞー」


切り替えの時間になり、私達は順番に案内を開始した。
慌ただしく会員証を受け取り、鍵を渡していく。

バタバタとしながら人がいなくなってから私達は一度息をついた。


「よし。今日、見学とかあったら睦実に頼んでもいい?」

「うん、もちろんだよ」

「ありがとう」


あまりにも栞が緊張しているから、私にも緊張がうつったみたいだ。
私までそわそわしてしまう。

ドキドキしながら葛木さんが来るのを待った。


それから、一時間が過ぎ栞が小さく溜め息を吐いた。


「今日来ないのかなあ」


諦めにも似た声。しゅんっとしている栞と共にエレベーターを見つめた。

確かに今日はいつもより遅い。
二十時を過ぎる事はなかなかなかったし。
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