完璧な彼は、溺愛ダーリン
「……来た」
栞がぽつりと呟く。それに私もコクリと静かに頷くだけ。
いつも通り。
葛木さんはピシっとしたスーツに身を包んでいて、左腕についている高価そうな時計だって例外じゃない。
ワックスで後ろに流した黒髪。凛々しい眉にハッキリとした二重。
何も変わらない。
私は彼の顔が見れなくて、咄嗟に視線を外した。
「あの、見学したいんですけど」
「あ、はい。どうぞ」
葛木さんより先に受付に来たお客さんを率先して私が接客した。
見学希望なら尚更私の役目だ。
一度も葛木さんの顔を見る事なく、お客さんを連れて館内を案内する為に向かった。
後ろが気になるけど、振り返る事はない。
ただお客さんへの接客に集中した。