完璧な彼は、溺愛ダーリン
「い、いらっしゃいませ」


ぽかんとしているわけにいかない。
受付にお客さんが来ていたから、会員証を受け取り鍵を手渡す。


そのお客さんを見送ってから、私は男子更衣室へと視線を向けた。


カッコつけてるのが成功しているって言った?
誰に?……私?そんなまさか。


「はは」


自惚れも甚だしい。
自嘲めいた渇いた笑いを零すと、私は封筒にチラシを入れる作業を再開した。


それなら栞だろうな。
栞の方が可愛いし、よく話しているし。


それから暫くして栞が戻って来る。
明るい栞はおばちゃんの人気者だ。

戻って来るのが遅かったのはきっと、そのおばちゃん集団に捕まっていたのだろう。


「ごめんごめん、東城さんとかと話が弾んじゃった」

「だろうなって思ってた」

「皆素っ裸で話しするんだもん。笑っちゃう」

「え、お風呂で話ししていたの!?」

「そうだよ~、流石に早く逃げたかった」


それに栞はあははって豪快に笑った。
想像してみるけれど、苦笑するしかない。
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