強引部長の独占ジェラシー
「ダメだよ、石原さん。自分の仕事を人に押し付けたら」
ふと、後ろからそんな声が聞こえて来た。声の主をたどるように振り返ると、そこにいたのはとても意外な人物で……。
「あっ、河原さん……」
「今の話、ちゃんと聞いてたからな〜」
書類を片手に持った河原くんが目をギラりと光らせる。
「いやいや、押し付けるなんて人聞き悪いですよ〜今の仕事で手がいっぱいだから川島さんにお願いしただけですって」
「嘘つけ、そうやって純夏ちゃんに押し付けてるんだろ〜」
「もう、河原さんっていっつも意地悪言う」
石原さんは口を尖らせて抗議した。
「ほーら、自分のは自分でやる。納期だって今からやればギリギリ間に合うだろ?」
河原くんはひらり、と私の手から訂正案の書類を奪うと、それを石原さんの元に戻した。
「全部任せないで分からないところだけ聞く。それでいいね?」
「はぁい……」
石原さんは肩をすくめると残念そうに返事をした。席につく石原さんを横目にこちらに向かってくる河原くんにお礼を言うと、彼は私の耳元でこそっと耳打ちをした。
「あんまりそういうの受けちゃダメだよ。全部純夏ちゃんに回って来ちゃうんだから、負担になっちゃうでしょ」
「う、うん」
意外だった。
河原くんが彼女に厳しいことを言うなんて。河原くんこそ、石原さんみたいな人に優しいタイプと思っていたから。