強引部長の独占ジェラシー


ちょくちょく保存していなかったか……。

ちらり、と時計を見る。迂闊に頑張れ、と言える時間では無かった。もし、締め切りを過ぎてしまえば、信頼関係が崩れてしまう。この職で大切なのは信頼関係であることは誰もが知っていた。


今日は定時で上がれそうだと思ってたのに……。これは仕方ない、か。


「締め切りは何時まで?」

「19時です。半分は出来てるんですけど、そこからのデータが全部飛んじゃって……」

お願い出来ませんか?と落ち込んだ顔で言う彼女を見て、手を伸ばさざるおえなかった。

「分かった」


そして印刷した書類を受け取ろうと思った時。


「自分の仕事を人に丸投げするのは関心せんな」


横から聞き慣れた声が聞こえた。


「部長……!」

そこにいたのは、外出から帰って来たであろう部長の姿で、私たちは無意識にピシッと背筋を伸ばしていた。


「自分のミスだ。自分でカバー出来るだろう?」

「でも……」

「コイツはお人好しなんだ。あんまり頼んでくれるな。無理をされて倒れられたら困るからな」


部長……。

”お人好し、倒れられたら困る”

この間から部長の言葉だけが頭の中でリピートされる。近くにいるというだけで鳴り出す心臓、すぐに熱を持つ頬。居心地が悪いのにどこか温かい。


「でも、もし間に合わなかったら……」

「どれ……データを見せてみろ」




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