強引部長の独占ジェラシー
すると、鈴村さんは嬉しそうな顔をして私に言った。
「そう、それは良かったじゃない。いってらっしゃい、楽しんできてね」
良かった……?
良かったってどういう意味だろう。
そもそも私達の会社では営業部や広報が外に出向くことはあるが、デザイン部が営業先に行くことはほとんど無かった。
何を言われるんだろうという不安の方が勝っていて、正直あんまり落ちつかない。
「行ってきます」
私はカバンを持ってオフィスを出ると、部長のいるエントランスに向かった。
デザイン部はラフな格好が許されている。自動ドアに反射する自分の姿を見て、これで行っていいものかと少し困惑した。
「川島、もうそろそろ来る。行くぞ」
「あ、はい……」
部長と合流して、自動ドアを通り抜ける彼の後ろ姿を慌てて追うと、後からやって来たタクシーに乗り込んだ。
沈黙が少し気まずくて、なんとなく指の腹で爪を撫でて誤魔化していると、そんな様子を見た部長は私に話しかけてきた。
「なんだ、緊張してるのか?」
「緊張というか、不安というか……」
小さい声でつぶやいて下を向く。
いっつもそうだ。
自分に自信がないから、何を言われるか分からない場には強くない。
「あまり気を負うなよ、俺もいる。肩の力抜かないと酔うぞ」
「ありがとうございます」