強引部長の独占ジェラシー
「じゃあ私は雫の御膳を……」
そう言葉にすると部長は頷いて、速やかに手を挙げた。店の人が来て部長がメニューを指さしながら二人分の注文をする。店の人は注文を取り終わると、これまた上品にお辞儀をして去っていった。
その後すぐにやって来たお水を私はじっと眺めていた。
部長と真正面で向き合っていることがなんだか落ち着かなくて、私はなんとなくグラスを手に取り水を飲む。ちびり、ちびりと飲んではいるけれど、これが続けばすぐに空になってしまいそうだった。
私はほうっと息を吐きグラスを置く。すると、部長は言った。
「良かったな、」
「え?」
「記事の件だ。大井の雑誌に載ったのはデザイン部じゃお前と鈴村だけだろう」
鈴村さんも……。
そうか、だからあの時「良かったね」って言ってくれたんだ。
良かったね、の意味が今やっと分かって嬉しくなった。鈴村さんに会ったら報告も兼ねていつものお礼を言おう。
「しっかりやってれば誰かしら見てくれる。誰かには届く。そうじゃなきゃ、ずっとはやってられないだろう?」
「そうですね」
仕事は評価されて初めて、上を見る。もっと、頑張ろうとか、よりよくしようとか、言葉にすると簡単なようだけど、実際に行動するのは難しい。
「本当に今日は貴重な経験をさせて頂けてありがとうございました」
「ありがとう、は自分に言ってやれ」