強引部長の独占ジェラシー


話しかけたい。けど、どうしよう。もだもだしているうちに部長は缶コーヒーを飲み終わってしまい、ゴミ箱に捨てると、そのままこっちに向かって来た。


「ん。」


部長と目が合って、軽く頭を下げる。


「お、お疲れ様です。昨日はありが……」


ご飯をご馳走になったお礼を言おうとしたら、部長は自らの口に人差し指を立てて、言うなという合図を送って来た。その仕草に慌てて言葉をつぐむ。

あんまりここでは言わない方がいいのかも。と悟ったはいいけれど、話すことが無くなってしまい、けっきょく何も話せずに部長と別れることになってしまった。


「はぁ……」


テラスでお弁当の包みを広げながらため息をつく。

もともと話すような間柄では無かったのだから、話す内容が無ければそうなるに決まっているのに、どうしても欲張ってしまう。

せっかく会えたのに、なんて心の中でつぶやけば、なんだか恋する少女のようで、自らを嘲笑った。


そんな気持ちのまま休憩は終わり、午後の仕事に戻る。午前中の流れもあってか、かなりスムーズに作業は進んでいった。


「よし、終わり」

現在の時刻は18時。
久しぶりに定時で上がれそうだ。

データを保存してからパソコンをシャットダウンし、カバンを持つ。


「お先に失礼します」

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