強引部長の独占ジェラシー


周りと挨拶を交わしながら、部長室を覗くけれど、部長はいなかったためそのままオフィスを後にした。


いつもより少し明るい空に心が躍る。今日はこのまま直帰して、家に帰ったら母が野菜と一緒に送ってくれたミカンでも食べてゆっくりしよしよう。


そんなことを考えていると、駅に向かう横断歩道の前に、見慣れた人が立っていた。信号待ちをしているその人は私がよく知った人だ。


後ろ姿だけでも、きらりと存在感を放っている人。そして、私が話したいと思っていた人だ。


「お疲れ様です、部長」

私が隣にかけより声をかけると、部長は視線をこちらに向けた。


「川島か、お疲れ」

「今日はこれからまた、外出ですか?」

「いや、今日は社長が来ていてな。後はやるからこんな日くらい早く上がれと言われた」

「そうだったんですね」


私の会社は少し特殊で主に会社のお偉い人達の元に行って営業を行っているのが社長。会社の内部をまとめているのが部長といった役割になっている。なので社長を社内で見かけることはあまりない。


「じゃあ部長。久しぶりにゆっくり出来ますね」

「そうだな。でも急に時間が空いても逆にどう過ごせばいいか分からないがな」


眉をひそめる部長に私はくすりと笑った。それと同時に信号が青に変わり、周りが一斉に歩き出す。

私たちも流れに合わせて歩いていると、数歩あるいたところで部長の進む足が突然ゆっくりに変わった。





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