強引部長の独占ジェラシー
好きでは無かったと私に打ち明けてくれた時、好きになれなかったとも言っていた。
それは好きになろうと努力したということ。恋愛に適当だったわけじゃない。それだけ一生懸命になったってことは、今何かしら思うことがあるはずだ。
それが分からないのがもどかしい。
自分のことではないのに、無性にモヤモヤしてかける言葉も探せずにいると、部長は立ち止まって聞いてきた。
「どうした川島?」
「部長……」
好き、という気持ちはつくづく厄介だと思う。溢れる気持ちは何かの弾みがきっかけで簡単に飛び出してしまう。
流れとか、立場とか、状況とか、大きく募った気持ちはそれらを全部無視して口に出した。
「あの、部長……!飲みに行きませんか?今から」
「今から?」
「はい、私知ってるんです。美味しいお酒が飲めるバー。そこがっつりした料理も出してくれるダイニングバーになってて……その、空いた時間の過ごし方が分からないのならご一緒に
どうでしょう?」
自分でもとんでもないことを言っていることは分かっていた。
社内の女性が簡単には誘えないよね、なんて話している中、私がこんなところでそれもプライベートで誘うなんてオッケーされるはずがない。
すると、部長は顎に手を当て、少し考える素振りを見せてから答えた。
「よし、じゃあ行くか」
「えっ、行くんですか!?」
ウソ……。
まさかオッケーされるなんて思わなくて、目をぱちくりさせながら驚いていると、部長は不思議そうな顔をして言う。
「行くんじゃないのか?」
「い、行くんです」
こくこくと頷いて、仕切り直すように部長に背を向ける。そして私は駅とは反対方向を指差して言った。
「そのバーはあっちにあります」
「分かった」
なんだか、そのバーの常連みたいな言い方をしてしまったけど、大丈夫だろうか。お酒が美味しいのは確かだけど、本当は大人な雰囲気を味わいたくて社会人になってから1度、友達と行ったきりの場所だ。
やっぱり自分はその雰囲気に馴染めなくてそれ以来は行ってない。