ブラック・ストロベリー
ちゃんと映っている。
あの人の世界にいる自分は、きっと誰が見ても素敵な人だって、そう思わせる。
わたしはそれになりきれなかった。
こんなに醜くて、嫌なこともたくさん考えて、強がって、逃げて。
その世界に映りこみたかった。
きらきらして、幸せそうにしていたかった。
「_俺が入り込める隙間なんて、最初からなかったよ」
強がりは、泣き虫の証拠だよ。
またアイツのこと考えて溢れる涙をこらえていたのに、目尻に触れたその指が涙腺を壊した。
「はやく、終わらせてきな」
ポケットからあの紙切れが出てきて、わたしの手にそれを包み込んだ。
それをわたしは、強く握りしめた。
__思っていることは、口に出さないと伝わらない。
言わなくてもわかるでしょう、そうやって私もアイツも、本音を後回ししていた。