ブラック・ストロベリー
「いってらっしゃい」
「はい、いってきます」
優しい笑顔に見送られてバスを出た。
急いで旅館に戻って着替えては、ガイドの上司に外に出てくることを伝え外に出る。
気づけば陸が迎えに来ると言っていた時間まであと5分を切っていた。
「ねーちゃん、」
少し早いのに、時間5分前行動な弟は門に寄りかかっていた。
前に彼女を待たせてナンパに遭遇させたらしい、まじめに誰よりも早く行動するようになった弟を見て成長したなとしみじみ思う。
私に気づいて声をかけてきた弟を睨むと、怪訝そうに眉をひそめた。
「文句、たくさんあるよ」
「会って最初にそんな顔すんなよ、こーわ」
となりに並んだ背も態度もでかいやつのわき腹に肘を入れれば涙目で睨まれた。
「絶対怒られるよって言ったのにアオイくんきかねーんだもん」
「それでも渡さないのが弟でしょ」
どっちの味方よ、そう言えばどっちもだよって言われたから腕をつねった。
「まあ、」
痛そうに、でもすごく嬉しそうにするから、
「ねーちゃんは、そうでなきゃな」
わたしのこと一生懸命考えてくれる弟に感謝しなくちゃいけない。
昔からシスコンとばかり言われて本人は否定してたけど、結局は私のこと大好きなのだ。
「うるさいなあ、」
アイツのライブまで、あと2時間を切っていた。