鏡の先の銀河鉄道
 冷静に、冷たい棘のある言葉で俺にそう告げる。

 頭の中が、混乱する。
 
 鏡の中から人が出てきただけでも混乱していたのに。そいつは俺のことなんて無視して、どんどん言葉を続け。俺を親友と呼ぶ。ジョバンニと名乗ったそいうの言葉が、頭の中で絡まっていくのがわかった。
 
 ――ジリリリリッ
 
 鏡の中から、大きな音がなり響く。
 「ヤバい、銀河鉄道が出ちゃう。行くよ、カムパネルラ!!」
 ジョバンニは、満面の笑みで僕の腕を力いっぱい引っ張り鏡の中へと身体が飲まれていく。突然のことに、鏡の外で踏ん張ることが出来なかった。それ以上に、俺の事を引っ張る力強さにあがなうことなんて出来なかった気がする。
 
 これが、始まりになった。
 
 鏡の中の世界は、俺の想像していた逆さまの世界ではなかった。建物も、看板に書かれた文字も、形は違っているが俺がいた世界と同じだった。それでも、似ているがどこか違うのも事実だった。身体に感じる空気や、雰囲気・・・些細な違いなのかも知れないが明らかに違う。

 そして、夜空に輝く幾億の星。
 
 俺の住んでいる所じゃ、こんなに沢山の星は見えない。それでも、鏡の中の世界は星だらけの世界だった。空に輝く星は、あまりにも沢山あり吸い込まれてしまいそうになる。
 首が痛くなるぐらいに、夜空を眺めながら一歩も歩けない自分がいた。この世界は、俺がいた場所とは違う。けれど、美しいことには変わりがない。それでだけで、安心できる自分は単純なのかもしれない。
 「カムパネルラ、こっちだよ!」
 遠くから呼ぶ、ジョバンニの声が聞こえた。夜空から視線をはずし、声のした方へと視線をずらした。
 視線の先のジョバンニは、大きく手を振っていた。そして、ジョバンニの後ろには機関車が止まっていた。

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