俺様社長の溺愛宣言
「…おはようございます」

私は奏に挨拶する。

「…おはよう」

そう言って微笑んだ奏だったが、突然驚いた顔をして、スッと私の首筋に手を伸ばした。

触れられた場所にドキッとする。

…零士に付けられたキスマークを隠すため、絆創膏を貼っているところ。

「…これ、どうしたの?」
「…ぇ…ひ、引っ掻き傷が出来て」

咄嗟に浮かんだ言葉を並べる。

「…引っ掻き傷が…ね」

優しく指でなぞられて私は慌てて一歩後退した。

「…オフィス行こう」
「…は、はい」

触れられた所が熱くて、私はぎゅっとそこを握りしめた。

…それから、私は何もなかったように業務をこなしていく。

今日は、零士に会わずに仕事が出来た。そのお陰か、仕事に集中出来た。

亜香里も、朝の事は無かったように振る舞ってくれたから尚更かもしれない。

…。

「…お疲れ様でしたー!」

1日の業務を終え、亜香里が私に言う。

「…お疲れ様。また月曜日ね」

そう言って微笑むと、亜香里も笑って頷いた。

「…奏先輩!」
「…何?」

「…これから時間ありませんか?」
「…ごめん、ちょっと」
「…そっか、すみません、お疲れ様です」

悲しげに微笑むと、亜香里はオフィスを出ていった。

私は最後の業務をこなし、終わったのはそれから1時間後の6時。

帰り支度をし、立ち上がる。

「…渡辺さん」
「…え?」

「…これから用がないなら夕飯一緒にどう?俺も今終わったんだ」

昨日は断ってしまったし、今日まで断るわけにもいかず、頷いた。


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