First Love〜ベランダ越しの恋〜




ガチャッ

「ただいま…」


家は暗く、まだ誰も帰って来てなかった。いつもの事だけど。

うちは母子家庭で、お母さんと2人暮らし。

お父さんは小さい時に離婚して出て行った。家を出て行くお父さんを、追いかけたのを今でも覚えている。


お父さん!って叫んでいるのに、お父さんは見向きもせずに歩いていった。


お母さんはお水の仕事をして、私を育ててくれている。そんなお母さんには感謝をしているけど、夜はいつもいなくて一人で夜を過ごす事のほうが多かった。


私は毎日毎日寂しくて泣いていた。そんな時は、かならず優人が来てくれた。小学校中学年に上がった頃には、ベランダをジャンプして私の部屋に来てくれた。


危なくて毎回怖かったけど、私にはスーパーマンに見えてすごくかっこ良かったんだ。



親に抱きしめてもらうような愛情を知らない私は、一緒にいてくれる優人が愛情をくれていると思っていた。



心の欠けた部分は、すべて優人が埋めていてくれた。


でも、優人は違う人のところへ行ってしまった。

私は寂しくて、寂しくて、私からベランダを超えて優人の部屋のベランダで、帰ってくるのを待っていた。





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