悠久のシャングリラ


視線を、藤から下へと逸らしていく。

桔梗に支えられるようにして
倒れていたのはーー。






「睡蓮っ!!」


青白い顔をした、睡蓮だった。


「す、睡蓮っ!
しっかりしてください! 睡蓮!」


必死に呼びかけても、反応はない。

目を固く閉じ、
力なく腕が投げられたまま……。

嫌な予感に、額に汗が滲んだ。


「ちょーーちょっと!
どういう状況なの、これ!?」


動転した桜が声を荒らげる。

それを横から、
鳳仙になだめられていた。


「落ち着いて、桜。
ひとまず、睡蓮をベッドに運ぼう」


倒れている睡蓮を背に乗せ、
ゆっくりと立ち上がった鳳仙。

私は高い位置の睡蓮の背に手を添えながら、
心配で胸が張り裂けそうな思いだったーー。

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