悠久のシャングリラ


今は本当に気を遣って、
話しかけてくれたことは、
痛いほどにわかるけど。

この時のあたしには、
そんなことを考える余裕なんかなかった。

というか、その考えに至らなかったのだ。

誰かが自分を心配しているなんて、
露ほども思わなかったから。

だからこの時も、
泣いていると茶化されると思った。

だからこの時は、
足早に逃げてしまったのだけど。

その後も、咲夢梨は何かとあたしを気にかけて色々と話しかけてくれるようになった。


初めはあたしの【名前】を知らないから、
近づいてくるのだと思っていた。


きっとこの子も、あたしのことを知れば、
勝手に離れていくだろう。


……そう、考えていたのに。

< 161 / 306 >

この作品をシェア

pagetop