春風駘蕩
「どうしたんだ? 内川さんにチケットを頼んでコンサートに来たり、素直にそんなことを言うなんて、珍しいな」
そう言った巽は、私の耳を甘噛みする。
「ん……っ、や、だめ」
「ここが弱いよな。高校の時から変わんないな」
「だから、だ、だめ」
巽は私の言葉に構うことなく私の後頭部を手で押さえ、耳元を唇で撫でる。
するすると動く唇がくすぐったいだけでなく、時々舌が優しくそのあとをたどり、そのたび体がびくびくと跳ね、足元から力が抜けていく。
「や……たつみ?」
巽にしなだれかかるように体重を預け、小さな声をあげた。
視線を向けた先には、熱い欲が浮かんでいる端正な顔があった。
濡れている唇からちらりと見えた舌に、胸の奥が苦しくなる。
思わず顔を寄せ自分のそれと絡ませたくなるけれど、熱い体の中に微かに残っている理性を総動員して堪えた。
巽と付き合いを再開してから長いとはいっても、国内だけでなく海外にも仕事で行くことが多い巽と過ごした時間はそれほど多くない。
今日会えたのも一ヵ月ぶり。
何度、最後に抱かれた夜を思い出しながら、寂しさに耐えただろう。