春風駘蕩


「俺のことが大好きで会えない時には泣いてるに違いない由梨香のこの顔、見せろよ。照れて赤くなって、涙も零れ落ちそうで。それは全部俺のせいだろ? そうでなきゃむかつく」

「むかつくって……」

巽の言葉が、なんだかおかしくてくすりと笑ってしまう。

「で、さっき聞いたチケットの理由だけど?」

「あ……」

「忘れてないぞ。さあ吐き出せ。……別れる以外の理由なら、俺はちゃんと聞いてやる」

「わ、別れるなんて、やだ」

巽の言葉に瞬時に反応した私は、大きな声を上げた。

「別れるなんて絶対にやだ。高校の時は立ち直れたけど、今別れたら私、もう無理。何もできなくなる」

荒々しい声で口をついて出た言葉に、巽はニヤリと笑った。

「そうだろうそうだろう。俺がいなきゃ由梨香はダメになるよな。安心しろ。由梨香が別れるって言いだしても別れてやる気はないから」

巽はそう言って、私の背中を優しく撫でてくれる。

良かった……。

別れるなんて言葉が出てきただけで慌ててしまう。

どこまで私は巽に惚れてるんだろう。

ホッとした私は、ふうっと息を吐き出した。

「別れたくないから、仕事、やめることにしたのに」

「……え? 仕事、やめるのか?」

ホッとした途端思わず口にした言葉に、巽がひどく驚いた。


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