春風駘蕩
「プロモーションもいいですけど、俺たちはとっとと入籍するのでマスコミに発表するならよろしくお願いします」
「わかってるわよ。由梨香さんの存在はとっくにマスコミに知られてるし、結婚も秒読みだと思われてるから問題ないわよ」
小倉さんは私を安心させるように、にっこりと笑ってくれた。
結婚してふたりの息子の母親でもある彼女は本当にたくましい女性だ。
「そうだ、今度のCDに入ってる曲を披露宴で演奏して、宣伝しましょ。マスコミも何人か会場に呼んで、いい記事を書いてもらいましょう。由梨香さんのウェディングドレス姿もキレイだろうし、当日は金屏風の前でふたりで並んで会見ね。きまり」
「え……金屏風?」
小倉さんの言葉に、私の声は裏返った。
会見だなんて、そんなの聞いてないし、するつもりもないのに。
隣に座る巽を見れば、仕方がないなあという顔でため息をついている。
それは小倉さんの言葉を受け入れたってことで、会見するってことなのだろうか。
「巽? あの、ウェディングドレス……金屏風……」
声をかければ、巽は私をじっと見つめ、何故か大きく頷いた。