春風駘蕩
ちょっと待て、と思わないでもなかったけど、小倉さんの考えの中には巽と私をつつがなく結婚させるという大きな目標があるというのがわかっていたこともあり、腹をくくって任せてみることにした。
そして、マスコミへの定期的な対応を行うことや、巽の口から私との関係をなれそめも含め小出しにしていくことが決まったのだ。
ある程度オープンに対応しなければ、マスコミの動きが盛んになり、あることないこと週刊誌に書かれたり、ネットにアップされ、取り返しがつかないことになるかもしれない。
それを防ぐために、巽と私の付き合いを、それなりに出すと決まったのだ。
結婚が決まればちゃんと会見を開くし、そのほかのプライベート情報も、なるべく公表する代わりに、無茶な取材はやめてもらう。
そして、私への取材はすべてお断りということにしてもらった。
私は一般人なのだ、それはもう、当然だろう。
その取り決めがなされて以来、私への突撃取材はなくなったけれど、ふとした瞬間、隠し撮りされているなと感じることもある。
おまけに、巽への取材依頼は相変わらず続いているらしい。
きっと、結婚が決まったと公表されればその数はさらに増えるに違いない。
……さすが、市川巽。まるで芸能人だ。
そうなれば、市川巽の嫁となる私も、記者会見に臨まなければならないだろう。
……仕方がない。