春風駘蕩
「そうだ、巽が師事しているイタリアの大先生にも招待状を送らせていただきましょう。ふふ、きっと世界中で話題になるわね。披露宴で共演ともなればDVDで売れるかも。あ、だけどあの大先生は気難しそうだし、慎重に交渉しないと……」
小倉さんのとんでもない考えに、私と巽は驚き、口をつぐんだ。
近いうちにイタリアにはご挨拶に伺おうと話していたけれど、まさかお忙しい中披露宴に来てもらうわけにはいかないだろう。
飛行機が嫌いらしいし、多分、出席は無理だろうな。
そう思いながらも、巽を見れば「あーあ」というような顔で肩をすくめている。
小倉さんは、すでに次のことに頭の中は移っていて、私のウェディングドレスは巽をバックアップしてくれているデザイナーにお願いしなければとPCに打ち込みながら、ホテルは国内最大の会場を備えたアマザンホテルにしようと電話をかけ始めている。
「入籍は今日でも明日でもいいけど、披露宴の日程は、アマザンと私で調整するから任せてね」
と言い切った。
「小倉さんが動けばなんでも思うがままに進みそうだな」
くすくす笑いながら、巽が私の顔を覗き込む。
「そう、だね」
私も巽と同じことを考えていた。小倉さんが動けばイタリアの大先生も忙しいスケジュールをどうにか動かして、来てくれそうに思えるから不思議だ。