【完】好きだという言葉の果てに
そう言われて、愕然とした。
いや、付き合ってたんだから、甲斐さんとそういう関係があってもおかしくないんだけど…。
何時の間にか、俺は彼女がそういうものから程遠い場所にいるなんて思ってたんだ。
もしかしたら、俺の都合のいい思いだけで、彼女にまた不快感を与えていたんじゃないか…。
そんな風に思って、少しだけ握っていた手を緩めたら、そのタイミングを計っていたかのように、甲斐さんが彼女の手を取った。
「おっと。逃げんなよ。暴れんなって」
「っ!放してっ!」
「なんで、そんなに機嫌悪いの、采明は?オレのこと本当は待ってたんだろ?」
ぐいぐいと顔を近付けて、そう捲くし立てる甲斐さんに、彼女は何も言えずに震えている。
このままじゃいけない。
また、彼女が傷付いてしまう。
そう思った俺は…。