千日紅の咲く庭で
見つめ合ったまま、一歩だけ私に近づいてきた東谷君に、無意識に私は一歩後ろへ下がろうとした。

けれど、私の背中には家の塀があったせいで、なんだか追い詰められたような状況になってしまった。


見つめ合ったまま、段々と近づいてくる東谷くんの視線は、真っ直ぐで私は身動きすら取れずにいた。

いつの間にか両肩に置かれた東谷くんの手は、服の上からでも分かる程熱を持っている。



お互いの息遣いさえ感じられるほど、距離が近づいた。

東谷くんに、キスされる…。



どこかでそう思った私は、反射的に目を強く瞑った。

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