千日紅の咲く庭で
一方の岳は、というと

「ほら、蚊が家の中に入ってくるから、花梨は早く家の中に入れよ」

そう言って、東谷君には一切、目もくれずに私を家に入るようにと促した。



「じゃあ、杉浦さん。僕はこれで。また月曜日に会社で。」
「うん、ありがとう」
その様子を見て、東谷くんは逃げるように私に話しかけて帰ろうとしていたから、私も頭を下げた。


東谷くんに向かって私が小さく手を振ると、東谷くんは少しだけはにかんだ笑顔を浮かべた。

そして小さく手を振り返してくれる。



うん。やっぱり東谷くんは、可愛い。

でもそれは、もちろん後輩として。


< 107 / 281 >

この作品をシェア

pagetop