千日紅の咲く庭で
「智子おばさん、変わんねえな。いくつになってもスラっとしててさ。うちのおふくろとは月とすっぽんって感じだな」

私の視線の先にある遺影を岳も眺めながら、苦笑いしながら口にした。


「うん…」
呟いた私に、小さくため息だけをこぼして、岳は立ち上がり、キッチンに向かった。



「お茶、もらうな。…って、確かここだったよな。」
小さい頃は岳だって、私の家によく遊びに来ていて、たまにご飯食べたり、お泊りしていた。

「冷蔵庫のものは勝手に食べてもいいから、好きに過ごしなさい」というあっけらかんとした性格のお母さんだったこともあって、岳だって当時は我が家のキッチンのどこに何があるかなんとなく把握していたっけ。


「うん、やっぱりここだった。」


キッチンからそんな声が聞こえてくるのを、私はぼんやりと聞いていた。

< 15 / 281 >

この作品をシェア

pagetop