千日紅の咲く庭で
「居るわけないだろ。彼女が居たら花梨にこんなことしてないだろ、バカ」


岳が背中越しにくれたいつのも口調の答えに、私の心は一気に浮上してくる。

「ねぇじゃあ、好きな人は?」

「何で、そんなこと聞くんだよ、バカ」


「いるの?」

感情なんて含ませないような口調の岳に、浮上した私はもう一度尋ねてみたのだけれど、岳から聞こえてきたのは面倒くさそうにした小さな舌打ちだった。


「ねぇ、岳?」

「いるよ。結婚したいと思う位に好きな女。」

岳の表情なんて確認できないけれど、岳の口調から岳が嘘なんてついてないってこと位すぐに分かる。

だって、幼馴染なんだもん。


「…そっか。」

私はそう答えるのがやっとで、岳の答えに浮上した心が一気に萎んでいく。

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