千日紅の咲く庭で
岳の答えを知りたかったくせに、今更知りたくなかったなんて、私はわがまますぎるよね。

歩道を歩く私たちの隣を走り抜ける車の音がやけに大きく聞こえた。私の周りの空気が一瞬、すごく冷たいものに感じた。


こんな時、岳の肩に顔を埋めていて正解だったと思う。
きっと私、岳の顔見てしまったら泣いてしまうと思うもん。


「そうだよね。岳、女の子にモテルもんね。好きな人位いるよね。結婚したい、なんて言うからびっくりしちゃったけど…。あっ、あの私、応援するからね」


うん、幼馴染として。悲しいけど応援するよ。
心なんてまだまだついてこないし、今は怪我した足首よりも心の奥が痛むんだけど。


空元気に笑って言ったら、岳に鼻で笑われてしまった。

「なんだそれ、応援とか中学生みたいだな」

岳はそう言って肩を揺らしてまた少しだけ笑った。


もう泣きたいよ。
怪我さえしてなければ、今すぐにでもここから走って、家の中で1人大声あげて泣きたいくらいなのに。


岳におんぶされたままじゃ私は何も出来なくて、それすら歯がゆいと思ってしまう。


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