千日紅の咲く庭で
もう叶わない恋だって分かったら、やっぱり幼馴染のままがいい。

岳とは、ずっとこのままの関係で過ごしていたい。

心の奥ではその答えを拒否しているのに、私は自分に言い聞かせるように心で何度も唱える。


もし私の傍から岳まで居なくなったら…。
そう思ったら、鼻の奥がツンとして思わず岳に回していた手に力を込めた。


「おい、バカ花梨。何すんだよ‼」

岳は私が急に回していた手に力を込めたものだから驚いたようにして恨めしげな声をあげる。

それでも、どこかちょっとだけ楽しそうで。


いつもの岳と二人でふざけあっているこの感じは、私に元気をくれる気がする。
私の萎んでしまった心を少しだけ軽くしてくれた。


「ねぇ岳、ずっと幼馴染で居ようね。私たち」

「…」
家に到着する直前、自分の気持ちを封印したくて、岳の耳元で呟いた私の言葉。

岳は少しだけ笑ったような素振りを見せたのだけれど、私の言葉に何も答えてはくれなかった。

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