千日紅の咲く庭で
「もっ…もう、何言ってんのよ、美知おばさん。」

冗談めかしたように、岳のことなんてなんとも思っていない振りして乾いた笑い声をあげて笑って否定した。


美知おばさんは、少しだけ淋しそうな表情を浮かべた瞬間を私は見てしまって、なんだか申し訳ない気分になる。


「美知おばさん、あのね、」

「何?花梨ちゃん」


本当は私、岳のこと好きなんだよ。

そう伝えられたら、どんなに心が軽くなるんだろう。

「私、もしも岳と私が恋人同士なんて関係になって…、ほ、本当に、もしもの話なんだけどね!!もし恋人同士になって、いつか終わりがやってきて、もう幼馴染の関係になんて戻れなくなっちゃうことが嫌なの。」


美知おばさんは、私の言葉に持っていた箸を静かに置いた。

「だって岳と別れてしまったら、美知おばさんだって私にとっては元彼のお母さんになっちゃうでしょ?こうやって、遊びに来ることだって躊躇ってしまうと思うもん。」


それにね、岳にはもう結婚したいと思えるくらい大好きな人がいるんだよ。


岳の言葉を思い出し、なんだか胸の痛みが強くなったような気がしたけれど、気が付かない振りして笑って見せた。


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