千日紅の咲く庭で
勘のいい美知おばさんのことだ。

私の言葉でもしかしたら何か感じたのかもしれない、そう思ったのはもっと先のことで。


美知おばさんは小さく息を吐くと、すべてを包み込むような穏やかな笑顔を浮かべる。



「花梨ちゃん、そんなこと気にしなくていいのに。自分の気持ちに…」

「気にするよ。私にはもう家族が居ないから、郷原家は第二の実家みたいなものなの。それなのに岳との関係にまで終わりがやってきたら、私の大好きな居場所がまた1つ無くなっちゃったら私…」


美知おばさんの言葉を遮って、一人で熱くなってしまった私に美知おばさんは優しさあふれる眼差しを送り、そうね、とポツリと一言こぼしたから、それ以上は何も言葉にすることが出来なかった。


「でも、岳が他の誰かと結婚したら、やっぱりここの家には来ること躊躇っちゃうね」


もう何度も岳の言葉が私の頭の中を駆け回っていて、想像するだけで胸の奥がざわついてくる。

私は冗談めかしたように言いながら、下唇を噛んで無理矢理に笑って見せた。


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