千日紅の咲く庭で
「花梨ちゃん…」

美知おばさんも私と同じようにして無理矢理に笑顔を浮かべていることは、なんとなく分かった。


「さて、食後に子供達にはリンゴでも切ろうかしら」
美知おばさんは私との間に流れた空気を変えるように、おもむろに立ち上がるとキッチンに立ち、私に背中を向ける。


リンゴを向き始めた美知おばさんの近くには、さっきまでリビングで遊んでいたはずの諒くんがすかさずやってきていて、早くリンゴがほしいとねだっている。


そんな諒くんの相手をしながら流れるようにウサギリンゴを作る美知おばさんは、私に背中を向けたまま声をかけた。


「花梨ちゃん、岳と何があってもここが実家だって思い続けて、遊びに来ていいんだからね。花梨ちゃんは私にとって娘みたいなものなんだから」


美知おばさんの言葉に、鼻の奥のほうがツンとした。

「うん。ありがとう」

「自分の気持ち、大事にね」

美知おばさんの言葉は、私の胸の奥を震わせた。

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