千日紅の咲く庭で
「お前、この間からなに勝手に、花梨に近付いてんだよ!!」

「いえっ、僕は…」



岳は、東谷君に勢いよく近づいてきて、あっという間にその距離を詰めた。
東谷君は、岳のその剣幕に明らかに動揺している。


私は、こんな剣幕の岳を見るのは初めてで、息の仕方すら忘れてしまいそうになった。

その勢いのある剣幕は今にも東谷君を殴ってしまうんじゃないかと思うほどで、私は小さく息を吸い込む。

「ちょ、ちょっと岳、何言ってんの?」


落ち着いてよ、岳。
岳のジャージの袖を力いっぱい握りしめた。

そうでもしないと、私の手は恐怖で震えだしそうだったから。

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