千日紅の咲く庭で
我が家がある方角とは、反対方向に全力で走った。


辿り着いたのは、さっき東谷君と一緒に降りた最寄りの駅。
帰宅ラッシュを少し過ぎた時間帯の駅前は、少し閑散とし始めていた。


私は駅の前で、頭をもたげるようにしてしゃがみこんだ。
もう涙で顔なんてぐちゃぐちゃだ。

仕事帰りの会社員や塾の帰りなのか自転車を押した高校生が、好奇の視線を向けながら私の横を通り過ぎていく。


「良かった。追いついた」

どの位、ここでこうしていたのだろう。

頭の上から息を切らせながら柔らかな声が降ってきた。


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