千日紅の咲く庭で
「ありがとう、東谷君。」

「さっきから、それ何回目ですか」
東谷君に心から感謝しながら伝えると、東谷君は呆れたようにして笑ってた。


だって、本当に頭あがらないくらい東谷君には感謝しているんだもん。


「それから、さっきの杉浦さんの話の件なんですけど…」

わざとらしく眉をひそめた東谷君の表情は柔らかなままだ。

「杉浦さんは、絶対1人ぼっちなんかじゃないですからね。僕も、会社のみんなもいるので。もしよかったら、杉浦さんの居場所の1つに会社も入れておいてください。」

私は思わず、東谷君の瞳を見つめると、かち合った瞳を東谷君は揺らして、はにかんだ。

「ま、まぁ、支店長は結構強引な感じの親父だし。仕事量も多くてストレスフルな時だってありますけどね。でもみんな同じ時間を共有している同志ですから。」

茶目っけたっぷりにウインクして見せた東谷君の顔を見てしまったら、どうにか止まっていた涙が、またポロポロとこぼれ始めた。

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