千日紅の咲く庭で
「遅ぇよ」

岳は指先に息を吐きかけながら、気怠そうに呟いた。

いつから待っていたのだろう。

私は思わず岳の指先を触ってみると、その手は岳の心を表しているかのように冷たかった。


「うちの合鍵持っているでしょ?寒いっていうなら家の中で待っていればよかったじゃん。寒かったでしょ?」

矢継ぎ早に喋った私が触っていた指先を、岳は少しだけ照れたようにして引っ込めてしまった。


岳の反応で私まで一気に頬に熱が帯びるのが分かって、私は余計なことをしてしまったことに急に後悔が押し寄せてくる。


岳はというと、少しだけ気まずそうに視線を宙に目を泳がせた後、私の手のひらに小さな鈴のキーホルダーのついた鍵をそっとのせた。

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