千日紅の咲く庭で
「花梨が変な気起こすといけないから見張っておくように言われたんだよ」

気だるそうに呟く岳は、我が家のハンガーを我が物顔で使って、ワイシャツを掛けた。


「それなら、別に岳じゃなくても…」

そうだよ、別に岳じゃなくてもよかった。
いくら幼馴染って言っても、これでも一応、いい歳の男と女なんだから。


一晩限りの関係だってあり得るかも知れないじゃない。



って、そこまで思ったら急に恥ずかしくなって、思わず首を大きく左右に振って想像したことを打ち消した。

私の思っている事が通じたのか岳は少しだけ振り向いて、私に意地悪な笑みを浮かべた。


「花梨、お前今、エロいこと考えただろ。」
「なっ!!」

きっと、今の反応で岳にはばればれだったようだ。



「安心しろよ。俺、花梨に色気感じないから」

「なっ…!!」
返す言葉を失った私を、岳は素知らぬ顔して浴室へと消えていった。



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