千日紅の咲く庭で
確かにそうだった。

昨日だって、気持ちが繋がって初めて会ったというのに、幼馴染みでいた時間が長すぎて結局いつものように夕食を食べて、一緒にテレビを見て、くだらない話をして過ごした。

今までと何も変わらない関係に、恋人という関係が変わったことが嘘だったような気までしてきたんだったっけ。


まぁ、正直なところは私の方が岳のことを意識しすぎてしまって、甘ったるい恋人同士の雰囲気になるのを想像するだけで恥ずかしく思ってしまったのだ。

だから、岳にふいにキスされそうになった私は気づかなかった振りして避けてみたり、わざとふざけて岳にちょっかいを出してみた。

終いには「コーヒー淹れる」なんて言ってキッチンに籠城してみたり、テレビのバラエティ番組見て、たいして面白くもないのに笑ったりしてしまったんだった。



結局、お風呂上りに業を煮やした岳が、半ば強引に抑え込むようにして私の唇を奪った。

だんだん深くなっていったキスに立っていられなくなってしまった私を、岳はベッドまで抱えるようにして運んでくれたのが始まりで、私たちは1つになった。

空が少し青みがかる頃まで、私たちはお互いの身体の隅々まで知り尽くそうとして、私は何度も意識を手放した。

そんな私に、岳は柔らかな優しい笑顔を浮かべて、啄むようなキスをした。


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