千日紅の咲く庭で
「あのさ…」

「さぁ、食べなさい」

岳が緊張した面持ちで発した言葉を遮るように、もうすでに気持ちよく酔っているおじさんが私たちに早く座って食事するようにと急かす。


完全にタイミングを逃してしまった岳も私も、少しだけ居心地の悪さを覚えながら食事を始めた。


「おいしい?」
「はい、とても」

いつもはおいしい美知おばさんの料理も、今日は味なんてよくわからない。

私は愛想笑いを浮かべて、返事すると美知おばさんは私の様子がおかしいとでもいうように小首を傾げた。


お腹も十分と言っていいほど満たされた頃、いきなり岳がおじさんと美知おばさんに向かって口を開いた。

「あのさ、俺、花梨と付き合うことにしたから」


私の一気に胸の鼓動が早くなった。


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