千日紅の咲く庭で
新聞紙の中にあったのは、赤やピンクや紫の小さな丸い花。

その花が、ドライフラワーになっている。


私はこの花をよく知っていた。

お母さんの好きだった、千日紅だったからだ。


「これ千日紅?」

「そう、花梨の家の庭に咲いてたやつ。」


「でも、どうして?」


「おばさんが遺してくれたもの、1つでも多く花梨に取っておきたくて。」


岳は、恥ずかしそうに頭を掻きながら、視線を泳がせる。


「いつの間に……」

「花梨の家の庭の手入れしている時に、こっそりな。」



やっぱり、岳の優しさはずるい。
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