千日紅の咲く庭で
「ねぇ、いつから好きだった?」

いつも通る歩道橋の前まで歩いてきた時、私の質問に岳の足が止まった。


「ずっと前から、かな?」

もうなんなんだ、そのアバウトな答えは。

私が岳の答えが不満だったことなんて岳にはお見通しだったようで、岳は小さく肩を揺らして、私を見つめる。

かち合った視線の先にある岳の瞳は色気を帯びて揺れている。


「初めて花梨を好きだと気付いたのは、中学生の時に花梨に彼氏が出来た時」

サッカー部のキャプテンのことか。

甘酸っぱい記憶が蘇ってくる。


「花梨が他の男に取られて初めて、好きだって気持ちに気づいたから、いつから好きだったのかなんて分からない」

岳はそう言って笑った。

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