千日紅の咲く庭で
「次に思ったのは、成人式の時に久しぶりに花梨を見た時。その時なんて、ほとんど喋ってもいなかったじゃん、俺たち。まぁ、その時は俺にも彼女居たから、声かけようなんて思いにもならなかったんだけどな。でも付き合う女のどこかに花梨の姿を重ねてたんじゃないかって今になったら思う。」


岳の手にギュッと力が込められたのが分かって、私もつい握り返した。

「花梨のことはさ、いつもお袋やうちに遊びに来て喋る智子おばさんから様子聞いていたから、会ってないくせに勝手に親近感湧いていたし」


「私もだよ、岳」

私の言葉に、そっか、と一言言って岳は息を漏らすように笑う。

「おばさんが亡くなったって聞いた時、花梨のことは俺が守らなきゃって、俺が幸せにしなきゃって、本能的にそう思った。その時は好きかって尋ねられても確信は持てなかったけど。」


岳は照れ臭かったのか星の瞬く空を見上げながら歩く。


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