千日紅の咲く庭で
私も手を引かれるように隣を歩きながら、岳の言葉を待った。

「おばさんが亡くなって、感情を無くしたみたいな花梨が段々笑ったり、泣いたり、怒ったりするようになった頃から、花梨のそういう顔もっと見たいって思うようになって、気づいたら好きだって確信してた」


岳がこうやって自分のこと想ってくれているなんて知らなかった。

岳の素直な気持ちを聞いたら、やっぱりくすぐったくて頷くことしか出来なかった。


「こんなこと2度と言わないからな、ばーか」

耳まで真っ赤にした岳が、いつもの口調に急に戻ってしまったから、私は思わず吹き出してしまった。


優しい岳も好きだけど、やっぱり岳はこうでなくちゃ。

岳だって本当は、素直な気持ちを喋ることが、くすぐったくて仕方ないみたいだ。


岳のいつもの意地悪な言葉が私の耳に心地よく響いた。

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