千日紅の咲く庭で
「それにしても、岳はやっぱりすごいな。学生の頃からの夢、全部叶えちゃうんだから」


なんとなく会話が終わって、どことなく気まずい沈黙が訪れる。私は新しい話題を、脳みそフル回転で探していると、小雪ちゃんが羨望にも近い眼差しでポツリと呟く。

中学の頃、別段仲が良かったというわけでもない小雪ちゃんと、共通の話題があるとしたら岳のこと位。そんなわけで、話題は岳のことになることだって仕方がないって分かっているのに。

私の心にはささくれが出来たような痛みを覚える。


「夢?」

オウム返しのような私の返答に、少しだけ困ったような笑顔を浮かべた小雪ちゃんは頷く。

「そう、岳の夢。昔ね、岳に聞いたことがあって。郷原酒店をお父さんの代で潰さないことと、大切な人とみんなに祝福されて結婚すること。私、それ聞いて大切な人ってきっと杉浦さんのことなんだろうなってずっと思ってたの」

岳の言葉が嬉しいと思うのに、小雪ちゃんから聞く岳の話が私の知らないことばかりで、やっぱりどこかチクリと痛んだ。


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