千日紅の咲く庭で
「俺の夢は、1つ目は実家の酒屋を潰さないこと。俺は次男だから、酒屋を継ぐかどうかも分からないけど、今の時代にあの店を守る方法を自分なりに考えて、今のネット通販の会社立ち上げた。どういう形になるか分からないけど、将来的には店の名前だけでも守りたいって思ってる。なぁんて、商店街の外れのどこにでもある小さな酒屋なんだけどな」

岳はそう言って、照れ臭そうに小さく息を漏らすように笑う。
それでも、岳の表情はどこか自身に満ちていて、瞳をキラキラさせている。

そういえば、小さい頃から郷原酒店を語る岳は誇らしげな顔をしていたっけ。


「それから、もう1つの夢は花梨との結婚をみんなに祝福してもらうこと。」


「だからって、今日は無理だよ。何の準備もしてないんだし」

満面の笑顔を見せた岳とは裏腹に私は結婚式を今日すぐにできないって、出来るわけないって思ったんだ。


「大丈夫。敏腕ウエディングプランナーの小雪が全面協力してくれた。花梨を驚かせたくてな」

岳は、私たちから少しだけ離れた位置でインカムで何かを忙しそうにやり取りしている小雪ちゃんを方に視線を向けた。

< 267 / 281 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop