千日紅の咲く庭で
「美知おばさん、ありがとうね。美知おばさんだって、岳だって忙しいのに私なんかの心配してくれて…」

美知おばさんはキッチンで日本茶を飲む私に背を向けて、せっかくだからと夕食や日持ちのする料理を作り始めた。手際良く料理をしている美知おばさんに声をかけると、美知おばさんの手は手を止めて振り向いた。



「私ね、確かに岳にあの晩だけは一緒に居るように言ったわよ。でも、それから先は岳が勝手にやっていること。花梨ちゃん、こちらこそ岳が面倒掛けてごめんね」

そういってくしゃっと顔を綻ばせる美知おばさんは、やっぱり岳に似ている。



「それより、少しは落ち着いた?」

美知おばさんは、大根の皮をむきながら私に問いかける。

「うん、少しずつだけど大丈夫。でも、まだふらっとお母さんが帰ってきそうな気がしてる」

「そう、私もまだそんな感じよ」

私の答えに同調してくれた美知おばさんの背中はなんだか物悲しかった。


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