千日紅の咲く庭で
◆◆

「ちょっと、俺一回帰るわ。」

美知おばさんの作ってくれた夕食を岳と囲んで食べ終え、食器をキッチンで洗い始めた頃、岳が私の隣に立って話しかけてきた。

溜まっている仕事もあるようで、岳が1人で住んでいるマンションに帰るらしい。

そういえばこの間、眠れない夜に、マンションの場所を尋ねてみたら隣の駅前にある高層マンションって言ってたっけ。

岳は私を気にしているのか、日頃は絶対しないくせに私が洗い終えた皿を布巾で拭き始めた。



これまで1週間も私に付き合って一緒に居てくれたのだ。
岳が家に帰ることを気にする必要なんてないし、私にそれを止める権利なんてない。


「いい大人なんだから、1人で大丈夫だよ」

そう言って口角を上げて笑って見せたら、岳は少しだけ困ったような顔をした。


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