千日紅の咲く庭で
「変な気、起こすなよ」

「起こすわけないじゃん」


岳の言葉に頬を膨らませると、岳は持っていた皿を置き、空いた手で私のおでこを指で弾いた。

いわゆる、デコピン。


「痛っ」
急な岳の攻撃に私は危うく洗っていた皿を落としかけた。

岳のデコピンが本気じゃないことだって、そんなに痛くないことだって分かっている。
それなのに私のおでこ、岳に弾かれたその部分だけに痛みにも似たような妙に熱い熱を帯びたような気がした。


「岳に言われなくたって、分かってるよ。そんなこと」


私は岳と同じように、泡だらけのスポンジをシンクに置いて、空いた手で岳のおでこを弾いた。


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