千日紅の咲く庭で
東谷くんにお礼を伝えて、玄関を開けて家に入ろうとした時だった。


「す、杉浦さんっ!!」
「ん?」

急に東谷くんに呼び止められて、私は振り向いた。
東谷くんは、真剣な顔して私を見つめている。

「今度一緒にご飯、行く時は、後輩の東谷ではなくて。そ、その1人の男、東谷で見て頂ければと思っています。」

「うん」

いつもひょうきんなことしか言わないイメージの東谷くんが、急に真剣な顔していうものだから、私も身体に力が入って、動けずにいる。


「あっ、年下で頼りないと思うんですけど…。何かあったらいつでも頼ってもらって良いっす。」

二の腕に力コブをつくるポーズをしておどけて見せる東谷くん。


やっぱりこれでこそ、東谷君だ。
そんな彼の姿に、私はまたちょっとだけ笑ってしまった。


「じゃあ、杉浦さん、お大事に…」
私の背中に手を振っている彼の、柔らかな言葉を聞きながら、私はもう一度だけお礼を伝えて、家の中に入った。

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